この春、古本屋で購入した昭和35年の中央アルプス登山ガイドブック。
当時の価格で130円。
この中に伊那川本谷ルートと言う木曽側から三ノ沢岳〜宝剣岳へ抜けれるルートが記載されていた。
中央アルプス最大の谷との事。
そして伊那川源流の始まりは千畳敷。
ロープウェイの千畳敷では無く、その裏にあるもう一つの千畳敷カールなのである。
※ここを西千畳敷と呼ぶ人もいるとか。
この本を読んでいるうちに「 このルートからカールを抜けて稜線に出た時にどれほど感動するのだろう 」と密かに狙っていたのです。
情報はほぼない。
7年前に某山岳会の方々が2泊3日でこれを行った内容をネットで見つけたが、ルートの詳細等殆ど参考にならなかった。
岳人2018年8月号でサバイバル登山家の服部文祥氏がこれを行っていたが、こちらもルート攻略方法等は殆ど無く歴史に触れていた内容。
「 (夜の中央線は) ささやかな野望を持った若い登山者にとって、冬の夜行列車は死刑因護送列車である。周りの乗客は自宅の布団を目指す酔っ払い。車窓を流れる家の明かりは、マッチ売りの少女よろしく、すべて平和で温かそうに映った 」服部文祥氏
この歴史ある山道を、地図片手に手探りで行くのも面白いではないか。
稜線出た時ガッツポーズしてやろう。
◼️ 2020/8/13(木)
仕事を終え、国道19号で大桑村のセブンイレブンへ。そこでビールを2本飲み車中泊。
◼️ 8/14(金)
朝3:30起床でトイレと食事を済ませ登山口へ移動。
登山口駐車場は既に10台程度駐車してあった。
朝5:00 伊那川ダム手前ゲートをスタート
今回お酒はウイスキー200mlと日本酒200ml。
ビールは350mlと500mlを1本づつ。
水は凍っている水500mlを2本のみ。
だいぶ重さを意識して最低限にした。
途中空木岳へ向かう途中のある避難小屋。
今度は車中泊では無くこの小屋を利用しよう。
蚊が少し心配だが、線香を焚けば問題ないだろう。
6:24 金沢土場到着。
空木岳への分岐で右に行けば木曽殿と空木だが、今回私は左側のルートへ。
ここを左に行く人はまずいない。
しばらくアスファルトが続くが、そのロードもいきなり左へ折れて沢側に落ちて行く。
そこは伊那川ダムへの水引きに使うと思われる関止めだった。
ここはこれ以上行けそうも無いので、アスファルトロードをまた登り返す。
ここからの林道はもう草むらになっており、朝露に濡れた草を掻き分け進む。
林道が終わった所に、沢へ降りれそうなケモノ道があったのでホッとするが、藪だらけの急斜面を50m以上降りなければならない。
下ってからこのルート?を振り返る。
草が濡れて滑るので注意が必要。
沢は最初から右岸行ったり左岸戻ったりと渡渉を繰り返しながら進む。
水量が多いので、渡る場所は緩やかな所を見つける。
熊ノ沢岳から流れ落ちる金沢を右手に横切る。
沢の横に廃道がありましたが、すぐ行き詰まるので沢を登った方が速いです。
もちろんピンクテープも道標のペンキも最初から最後までありません。
この付近の岩場でステンと転びストックが一本折れました。
まだ1,600mちょっとの標高。
あと1,200mもこの沢を登るのか....。
前にポコンと見える山は中三ノ沢岳かな?だとしたら少し嬉しい。
ガンガン進みます。
この辺りになると、岩と沢の声が聞こえるような不思議な感覚で、どのルートが良いのか見えて来ます。
10:22 1,900m付近
南沢を越したら一回目の休憩を入れようと思ってましたが、その前に景色の良い場所があったので1本目のビールを飲んで10分ほど休憩。
11:50 2,300m付近
ここに平地が。
2年前に服部文祥さんが野営した場所で形跡が残ってました。
この場所は、沢から左に少し上がった場所で見逃しそうですが、人間って自然と同じルートを通るのですね。
その10m上にテントを設営した後も。
誰か1名ですが、ここ最近で入った形跡がありました。
宝剣の頭でしょうか。
上に登るほどルートも丸くなって行きます。
2,500m付近
ここに小滝が4つありました。
一つ目は簡単に巻けたのですが、二つ目が険しく巻けない。
夢中で登っているうちに、ルートと言うか尾根一つ分ズレたのかもと考え50m程登ってきた沢を降ります。
YAMAPのログでその迷った部分が出たました。
小さな尾根を狙いましたがハイマツが高く、無理矢理でも前にいけません。
50m下がった場所から再度この滝周辺の地形を読み、先程の滝経由が間違って無かった事を確認。
再アタック。
行き当たると少し戻ったり、対岸に登りルートを確認。
この滝四連チャンに1時間以上費やしました。
2つ目4つ目が難しいです。
でも沢ぐつとロープが有ればすんなり行けるかも知れません。
もう一つ滝を巻いて上に上がると遂に出ました。
西千畳敷カールこと伊那川本谷です。
後ろを振り向くとあんな後ろに三ノ沢岳が。
そして雲行きが怪しい。
14:47 宝剣から三ノ沢岳に向かう途中のコル下に九十九折れの廃道を発見します。
ただそこまでハイマツが高すぎて行けません。
ここは実質無理だと早々に見切りを付けます。
そのまま沢を登り続けます。
伊那川の最初の一滴を見つけました。
ただその先は、さらにハイマツが高くなっており10分以上格闘しましたが突き抜けられません。
また50m程降りて右の極楽平に向けてのルートに取り直します。
ガレガレですが、ハイマツ漕ぐよりも全然良いです。
ただ極楽平の方が沢の直登より高い位置なので、その分登りが大変。
ここに1名の足跡を発見。
やはり同じルートを取るのですね(笑)
15:40
極楽平到着。
やりきりました。
伊那川ダムから10時間40分です。
もう一本のビールを惜しみなく開けました。
夢中になりここまで食糧を一度も取らずに来てましたので、安堵感も重なり一気に酔いが来ました。
その後、檜尾避難小屋に行って泊まる予定でしたが、そこまで行ける体力があるか不安だった事。
沢で散々水浸しになり、急に風の強い稜線に出た事で寒さを感じたので、千畳敷カールに降りる事に。
池山尾根経由で登ってロープウェイで下山すると言う福井県大野市の登山者と下山中お会いしたので、久々の人との会話が嬉しくて酔いもあったので、この日の行程をペラペラ喋りまくりました。
この方、仙波さんの事を知ってました。
流石福井県で有名だなと改めて思いました。
ロープウェイ駅でビールを再度飲み祝杯。
俺だけズタボロです。
その後千畳乗越まで登り返し、宝剣山荘のご主人チシマさんと、バイトの詩織ちゃんに挨拶。
ここでも祝杯でビール2本堪能。
20:00 木曽駒ケ岳頂上山荘横のテント場到着。
持って来ていたジンギスカンを焼き、日本酒とウイスキーを飲んだ。
この日初めての食事。
21:00 就寝。
翌日は4:00起床。
5:00木曽駒ケ岳北尾根のルート上部200mを調べて上松Bから下山。
電車とタクシーで車を取りに伊那川ダムへと戻った。
◼️ 最後に
先に書いたように山岳会の方で2泊3日。
これがスタンダードだと思います。
ちょっと押しすぎたかも知れませんが、次なら8時間切れるとも感じました。
携帯はドコモもauもずっと圏外。
他に登る人は1シーズンで2組もいないのでは無いかと考えます。
何かあったら死に直結します。
距離にして全行程で20kmあり、後半諦めてから戻るのは容易ではありません。
それなりの技術、経験、体力を持ち合わせた人が行くと思うので大丈夫だと思いますが....
そう言いながら私は、次は小渋川福川からの百間洞。又は木曽駒ケ岳北尾根か、三ノ沢尾根(蕎麦粒尾根?)を単独でやる予定。