実質二日目に入る中スゴ小屋をスタート。
スコールの影響で水ハケの悪いスゴ小屋周辺には水溜りが多数出来ていた。
ヒョイヒョイとその水溜りを飛んで薬師岳に取り付く。
ダウンを着ていたのですぐ熱くなったが、稜線はどうなのだろうか。
脱ぐ判断はもう暫く待った方がいい。
レインとダウンの前ジップを全開にし冷たい空気を取り込んだ。
右手に富山市内の灯りがキレイに見えた。
この景色何度目だろう。
何回も見てもキレイと言う感性は変わらず見惚れてしまう。
登りはキツく感じたが、ペースは悪くない。
2日目に調子が良いのは自分の体質か、モチベーションの変化なのか。
薬師岳肩部分の間山まで38分。
過去最高タイムだった。
稜線は多少風はあるが寒いと言う訳でも無い。
浮いた時間でダウンを脱ぎレインの上だけに。下は短パンだ。
動き易くなれば更に加速する。
4時間寝たのも寝過ぎだが、思い切った諦めと言うか、割切りが良い回復となっていた。
北薬師岳手前で岩場で大きく転んだ。
ストックがぐんにゃり曲がり、強く打った右肘から出血が酷い。
ストックを曲げ直し、右肘も応急処置で止血。
そうこうしてる間にガスが出て来てペースダウン。
8/13 0:13
薬師岳山頂到着。
山頂から1時間かからず薬師峠なので8人のゴボウ抜きを確信。
心の中でニヤける。
実は自分の中で薬師峠泊とスゴ小屋泊ならスゴ小屋泊のほうが有利になる可能性を感じていた。
それは稼働時間の問題。
初日は全員がほぼ寝てない状況からのスタートで17時間以上はパフォーマンスが極端に悪く なると理論付けデータ化していた。
後は気温だ。
薬師小屋まで30分で駆け下りる。
小屋前に応援者がおり薬師峠でのテン泊者を10秒で教えてくれた。
石田、吉藤、船橋、江口、雨宮、佐幸、垣内、近内。
ここまでは把握していたが、驚いたのは片野、有吉と通過済みだと言う。
しかも22時に近いタイムで。
スゴ小屋発時刻のデッドを完全に超えていた。
そこまでして薬師峠に行く意味とは。
目標への拘り?それにしても良い決断では無い。
初参戦者には申し訳無いが、“ ただ行った ”に過ぎない。
案の定薬師峠に私が1時過ぎに到着すると多数のシェルターが張られている。
起きていたのが佐幸選手。他は熟睡していた。
石田選手と吉藤選手はGPSを見れば北ノ俣岳の一歩先で停滞。
江口選手が10分前にスタートしており太郎小屋付近。
トイレと洗顔だけ済ましそのまま太郎小屋へ。
01:25
太郎小屋ではNHKさんの撮影。
トレイルランナーが2名おり元気に話し掛けて来た。
カロリーメイトを食べながら足裏ケア。
そのトレイルランナーと会話するが、その来た行程、内容がちょっとレベルが高い。
よく顔を見たらヤマケンこと山本健一氏。
もう1人はキクリンこと菊嶋啓氏だった。
キクリンは私の事を認識している様子も、ヤマケンは「 男澤?変わった名前ですね! 」と少しガッカリ。
世界のヤマケンだもんなぁ〜。
俺トレランほぼ辞めてるし仕方ないと苦笑い。
3人で記念撮影。
NHKカメラマンさんに撮って頂く。
01:36
北ノ俣岳に向かう。
3週間前にここを通ったのに、夜でガスだからかいまいち感覚が掴めず「 いまどの辺? 」と言う感じ。
間も無く北ノ俣岳山頂と言う所で目の前にヘッデンが見えた。
江口選手だ。
私が速いのか、それとも江口選手が遅くなってるのか。意外な程呆気無く追いついた。
後ろに回り込むが、江口選手は私の存在に気が付いていない様子。
ヘッデンを消し更に近づいて「 ゎはははは!!!!! 」と大声で笑ったら「 ギャー!!!!」と飛び跳ねて驚いてくれた。
そこから2人で黒部五郎を目指す。
草が生い茂り、そこから露が垂れ濡れるので江口選手を先に行かせる。
ペースは遅いが、せっかく江口選手と一緒に行程を行ける喜びがあり、談笑と「黒部遠い!」と愚痴で盛り上がる。
よう初日に黒部五郎小屋に行けるわ...。
望月選手や紺野選手の凄さを改めて感じた。
私なら100回やっても100回失敗するであろう。
江口選手も眠気が取れて次第にペースアップ。
夜中の2人パックは良い方向に行く。
8/13(月) 04:30
黒部五郎岳の肩に到着。
ここから1時間で黒部五郎小屋が目安のタイムだ。
途中のドロで江口選手が滑って三回転んだ。
お尻が泥だらけでなんとも言えない汚さ。
同じルートで私は転ばないので「 体幹が弱い! 」と指摘する。
05:33
黒部五郎小屋到着。
名古屋のランニングクラブのメンバーが応援に来てくれていた。
カレーを頼むが無いようなのでカップラーメンを1つと酵母パン2つを食べる。
大石由美子さんも応援に駆けつけてくれた。
雨宮選手、佐幸選手、船橋選手も到着。
やっぱりペースが悪かったのか吸収されてしまったので、まだ休憩中の江口選手に後1分で出る旨を通達。
05:53
黒部五郎小屋を一人出発。
三俣蓮華岳への急登も快調に登れる。
登山者より吉藤選手と30分差、石田選手と1時間差と聞く。
このペースなら槍ヶ岳まで追い付けると試算。
黒部五郎小屋での情報では石田選手が二度目のビバーク(露営)を黒部五郎テン場で1時間程したとも聞いていた。
北ノ俣で寝て黒部五郎で2度目のビバーク。
実に質と効率の悪い休憩の仕方だ。
これは石田選手が潰れている可能性が高い事が伺えた。
更に言えば石田選手は2,500mを超すと高山病対策でペースを意図的に落とす傾向がある。
そこにチャンスがある。
三俣蓮華岳山頂からは中道を選択。
このあたりはほぼ小走り。
登りも走れる所は走り前を追った。
後ろは気にならない。
このペースならSクラス選手でも追いつけない。
双六小屋手前は登山者で混んでいたが、焦らず同じスピードで会話を楽しみながら降りた。
07:40双六小屋到着。
吉藤選手がカレーを食べており、私もカレーを注文。
会話の中で吉藤選手の疲労が伺えた。
カレーが出て来たタイミングで吉藤選手が小屋から出発したので、カレーを流し込むように食べた。
すぐ樅沢岳に取り付き中腹まで勢いよく登る。
双六に山ノ内はるかちゃんが応援に来ていたので、後ろに向かってお別れの手を振った。
「 ん?! 」
テン場に TJARのバーナーが!!
CP通過してない!!!
急いで来た道を下って戻る。
ちょうど江口選手が双六小屋に到着。
戻って来た私を指差して笑った。
後でもう一回壮絶なドッキリ仕掛けてやる!!と心に誓う。
8:10双六小屋CP追加(改めて)
15分はロスしたが、ここから得意の西鎌尾根だ。
目標は2時間切り。
一気に2人を抜きそのまま上高地CPを取る。
この TJAR2018のターニングポイントは槍ヶ岳だ。
西鎌に吹く風全てが追い風に感じた。